ベルゲン通信11月号「フィヨルドの波」

今年のノーベル賞が発表されました。生理学・医学賞ではコロナワクチンにつながる技術を開発した女性研究者も共同受賞しました。文学賞はベルゲン大学で哲学を学んでいたノルウェー人のヨン・フォッセさんに贈られました。そして彼の自宅リビングにはその作品群を象徴するフィヨルドの波の絵が壁にかけてあるそうです。

さてフィヨルドとリアス海岸の違いがよくわからないという人もいるので説明しておきましょう。リアス海岸は谷が沈降したり海水面が上昇したりしてそこにノコギリの歯のように入り組んだ湾ができたところです。日本では三陸海岸や伊勢志摩が有名です。それに対してフィヨルドは太古の昔に氷河が陸地を削り取ってできた複雑な地形の湾や入り江のことです。寒さが厳しいところにしか見られず、最も多くあるのがノルウェーです。

ずっと前にサーモンの養殖業者がノルウェー大使館商務部の招きで来日し、その方々と話す機会がありました。「隣の家は近くにあるのですか」と尋ねると「フィヨルドの向こう岸にあるよ、だから船で行き来するんだ」という答え。“ポツンと1軒家”どころではありません。日本よりもずっと高緯度なのに北大西洋海流のおかげで真冬でも海が凍らないから季節を問わず船を出せるし、深く切れ込んだ入り江なので波も静かです。ベルゲンも一つのフィヨルドの中にあります。中学生に渡している「定期テスト対策ワーク」の表紙は私が撮ったベルゲン港の写真なのでイメージしてみてください。

さて受験生はこの時期どうしてもモチベーションや成績の波が引いていきそうになります。周りが本気を出し始めると、自分が頑張っていても相対的に成果が見えにくいからです。しかしそれは他の人たちも同じ、ここで次の波を引き寄せられるかどうかが大切です。そして波にうまく乗れる準備をしておきましょう。それには漢字や英単語など基本事項をおろそかにせず、すき間の時間をうまく利用することです。太平洋の波はフィヨルドの波より荒々しいですが、どの海の波でも寄せては返し、引いたままのことはありません。