ベルゲン通信6月号「少納言の初夏」

 梅雨入りまでの期間を初夏と呼び、わりと過ごしやすい季節ですが、長期予報によれば梅雨が明けての今年の盛夏はいつにも増して暑くなりそうです。生徒たちも「最近は春がなくて急に夏になる感じがする」と話していました。外での行事が多くなる季節、熱中症に気をつけましょう。

 さて今回の国語の中間テストの範囲には中2は枕草子、中3は漢文が含まれます。歴史的仮名遣いの読み方、レ点一・二点の使い方など古典を学ぶ良い機会ですが、高校生は古典文法に手こずっているようです。「どうしてこんな細かい面倒なことを覚えなければならないの」というぼやきも聞こえてきました。確かに私の今までの経験で古典文法が直接役立ったことは残念ながらありません。せいぜい中高生に古典のことで質問をされた時に教えることができることくらいです。しかし古典を広くとらえれば、私たちの母語である日本語のリズムとも、情報の共有と伝達とも、そして一定の文化のもとで養われる心の豊かさである教養とも古典は深く関わっています。

 ところで先日、英語で道を訊かれたのですが“マリンなんとかいうスーパーでシューズを買いたい”というようなことだったので、稲毛海岸のマリンピアを教えてあげました。これって英語を話せなくてもほとんどが外来語なので小学生にだってわかります。漢字を輸入し、かな文字を発明し、外来語も使いこなす日本語の柔軟性をしみじみ感じます。現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」の清少納言役(少納言は役職名ですから本来はセイ・ショウナゴン)はファーストサマーウイカさん。これからあの日本一有名な随筆の誕生がどう描かれるのかが楽しみです。それを演じる彼女の芸名が“初々しい”のウイから初夏をウイカと読みそれを英語にしてつなぎ合わせたものというのもまた日本語ならではのユーモアでしょう。

 考えることの土台は言葉です。人間はAIのように大量の言語をいっきに学習することはできませんが、楽しみ味わいながらその土台を作ることができます。そしてそれを学ぶきっかけは今ですよ。