ベルゲン通信9月号「DMNの時間を作る」

 今年の講習授業をしていてあらためて感じたことは中学生の休み時間風景の違いです。少なくとも数年前までは、休み時間になるとワイワイガヤガヤしていて、それから「さあ次の授業だから席について」と大きな声で促して始める形だったと思います。元気があふれていて、学校が違っていても仲がいい小学生たちは今もそんな感じです。ところが中学生の場合、全員が静かに自席でスマホを見ている休み時間があって、そこにそっと入って行って「それでは始めます」という感じ。なんだか静寂な時間を破って申し訳ないと思うほどです。

 脳の仕組みや行動心理に詳しい早稲田大学の枝川教授によると、休み時間にスマホでSNSやゲームをすることは、休憩のつもりが実は逆効果だとのこと。なぜなら脳が過労状態になってしまうからだそうです。そうは言っても中3は毎日5科目の密度の濃い授業を受け続けるのですから、「休み時間くらいは気分転換させてよ!」と誰でも思います。そしてその気分転換として自然にスマホに手が伸びる気持ちもわかります。しかし、スマホのさまざまな機能は便利な一方、情報量がとても多いため、脳がより疲れやすくなるのです。では効果的な気分転換とは何か、それがDMNだそうです。何かすごい仕組みの略称のようですが、簡単に言ってしまえば「深く考えずボーっとする時間を作ること」で、これが脳内での「デフォルトモードネットワーク(DMN)」という神経活動です。この状態は脳の回復だけでなく、ひらめきが生まれやすい状態でもあるのだとか。そういえばこの通信のテーマが浮かぶのは散歩をしていたり入浴の時だったりします。DMNの状態になっているのでしょう。

 学校の授業中に窓の外をボーっと眺めている時間があるから大丈夫というのは困ってしまいますが、意識してDMNの時間を作ってみてはどうでしょうか。おもいきり深呼吸をして目を閉じる5分間があってもスマホは逃げていきません。そしてそれは私たち大人の生活時間の過ごし方にも言えることかもしれません。